2023年の12月、勝浦の別荘改修プロジェクトが竣工しました。
木質マリブの別荘(Woody malibu cottage)といいます。
1980年頃に建てれ、リビング・ダイニング、キッチン、三つの和室、洗面室とお風呂という純和風の間取りを持った建築でした。
老朽化した屋根を葺き替え、柱・土台を部分的に取り替え、床材を張り替え、室内の壁を取り払い……と外壁以外の部位に大きなメスをいれています。
そうして、リビング・ダイニング・キッチンはひとつながりの空間となり、寝室は部屋としてしつらえ、水回りの洗面室とバスルームは空間を反転させて更新しています。
新しくするものがある一方で、住まい手から得た精神…「古き良きものを大切にすること」を設計に持ち合わせることで、障子や引戸などの建具は、面材を張り直して再利用しています。
また、リビングと小上がりスペースの天井は、約40年前に作られた小屋組をそのまま現す空間となっています。
これまでリノベーションの設計は、新旧の対話…と考えていました。そうしてできる空間には新しいものと古いものが対峙してできあがり、新旧の図式や構成がそのまま空間に立ち上がる……というよりは、できるだけ新旧が馴染み、混ざり合うことを考えながら、空間や構造、仕上材や設備も含めて、新旧のすべてを生かしながら・生かされながら…という相関関係の状況になるようにと…設計をしていました。
新築の場合、古い家具や什器、エイジングのかかった仕上材や植物を室内空間に取り入れることは、時間の経過や刻みという深みを与えてくれる…と考えています。リノベーションの場合では、すでに時間軸が経過した空間は広がっています。
そこで、新しいものと古いものを組み合わせたり、合体をすること…その視点をもつことで、なにかアップデートされたような…更新された空間が生まれてるのでないか…そんなことを考えていました。
私たちの頭の中では、建物オーナーの歴史レイヤー…過去と現在の造り手レイヤー…構造・設備・仕上材のレイヤー…リノベーション特有のレイヤーが混ざり合って、重なりあって浮かび上がっています。空間にも、そのような何層ものレイヤーが重なり合って、奥行き感のある空間ができあがったのでないか…と感じています。